
LUCAS BLALOCK
par MizoguchiTsubasa
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fernwehで売っているのものは
なにも服だけではない
例えば、本も売っているよ
それは本を売りたいというよりも
それを考察することによって起きる意識の変化を売りたい
あるいは、それらの共有だ
ルーカス・ブレイロックは大判のフィルムカメラで撮影した写真をスキャンし、それをフォトショップで加工した作品を制作しているアメリカ人アーティスト
そのデジタル加工の処理は完璧な美しさを求めている訳ではなく、処理をあえて不完全、或いは必要以上に過度な状態にする事で、編集過程そのものにも意義を置いた作品を生み出している異質なアーティスト
なんとも不快、実に不快だ
でも心に残る
私自身、美しいものは好きだけれど
心に残る感情が"美しい"だけで終わってしまうものに心を揺さぶられることはない
現代において、写真作品とデジタル加工が一対である事は暗黙でありながらも周知の事実として存在している
しかし、それらはあくまでも舞台裏の作業である
後ろめたいものであるかのように表出される事はない
彼はそのデジタル加工の痕跡を敢えて歪ませた過度な表現によって、それらを可視化している
本来は日常を切り取るはずの写真というツールへの意識を混乱させ、撮影行為や制作過程そのものに意識を向けさせる
そんな彼の作品を楽しめるアートブックを2冊
店頭とオンラインストアで販売中
本書、FIGURESはコンピュータ上で行われた偶発的な計算によって配置される数値と、ルーカス本人を撮影したセルフポートレートによって構成、合成されており、本来は単なるツールでしかないコンピューターソフトウェアを表現の主役として押し出したもの
スイスの高級リゾート地で有名なサンモリッツは、毎年1人のアーティストを招致してアーティストが滞在制作した作品を元に『SOUVENIR』という年刊式の作品集を発表するというプロジェクトを行なっている
本書はサンモリッツがルーカスを招いた際に、彼が制作した67枚のポスターデザインを一冊にまとめたものだ
つまり
1冊目は彼の主導によって生まれた作品集
2冊目は他者の主導によって生まれた作品集となる
仕事はどこまでいっても他者ありきだ
そこにこそ、アートとワークの最も大きな違いが存在する
ルーカス・ブレイロックの場合
一体どうなんだろうな
今日も意識の変化を売りたい
LUCAS BLALOCK<ルーカス・ブレイロック>
1978 –
アメリカ・ノース・カロライナ出身
バード大学写真学科を経て、UCLAにて美術学修士号を修了
2015年、MoMAのグループ展でも注目され、作品はコレクションとして所蔵される
2016年、あいちトリエンナーレの「トランスメディテーションーイメージの未来形」展に参加するほか、欧米を中心に展示多数
代表的な写真集に『Windows, Mirrors, Tabletops』